今月の話題 芍薬

「立てば芍薬」は漢薬のこと!?

最も多く使われる重要漢薬

シャクヤクはボタンと同科同属で、薬用部が根であること、近代医薬学上の薬効が鎮静、鎮痙、鎮痛、収斂、婦人薬であることも牡丹と似ている。しかし漢方では、牡丹皮が血剤であるのとは対照的に、芍薬は大腸内の水滞を尿利によって取去る水剤として区別している。
江戸時代から今日まで、漢方薬中でも、使用頻度、使用量共に最も多い重要漢薬で、多くの漢方に処方され、1日2〜6gを煎剤とする。紅・白2種の野生ヤマシャクヤクも一部の漢方家が使用してきたが、一般には、奈良、長野、新潟県と北海道産の栽培品が使われている。
中国では、華北、内蒙古の野生品や浙江、安徽、四川省産が有名である。  戦前までは含有成分は、タンニンと安息香酸が知られていたが、近年、有効成分として、安息香酸と蔗糖を結合する苦味配糖体ペオニフロリンが発見された。

腹が立ったら芍薬

「立てば芍薬」とは、漢方では腹が立つという精神状態のときに現れる、腹の筋肉が緊張する症状として見出して、芍薬がその精神的肉体的異常を解消する。つまり、芍薬を使うときの鍵、決め手(キーポイント)としている。漢方ではこれを証と呼び、この場合は腹の異常で診るので、これを腹証という。
中国漢方の古典では、拘攣、拘急という。つまり綱引きをしている状態である。
この腹証を発見したのは、漢薬の本場の中国ではなく、江戸時代に広島から京都に移って東洞院に居を構え、吉益東洞と名乗った日本の漢方中興の祖といわれた名医である。腹の立つとき、直腹筋が緊張して、腹に二本棒が立つときは、芍薬配合の漢方薬を服用させれば、それを完全に解消するというのである。
これを近代医学的に追求すると、その原因は初めに記したとおり、大腸に滞留した水分のために腸が下垂しているのを、両直腹筋がつり上げている生理現象である。
芍薬が痔・ヘルニア・脱腸・下腹部痛・胃痙攣・下痢などに応用される原理もわかるし、四六時中綱引きしていれば、疲労性になり短期で神経症になったり、怒りやすくなるのも当然である。

臍が立っても芍薬

この症状を人間工学的に考察して「臍が立てば芍薬」をという新しい証を、筆者は開発した。
健康な人の臍は円形か横長の楕円形であるが、芍薬適応症の人は臍が縦長になるのは道理である。
ところが最近、カバーガールやタレントの美女たちの大半が臍が縦長に立ったスタイルを見せているので、それにならって臍の整形手術をする若い女性が全国的に増えている。タレントの戸籍調査まではできないが、彼女達の登場年数が極めて短命なのは事実である。
江戸時代に限らず、美人薄命は現代でも真理であることを物語っているではないか。薬用には赤芍・白芍の二種がある。秋に掘り取った根を水洗いして、そのまま干したものは、赤味を帯びているので赤芍薬と呼び、薄いコルク皮を取って、湯通しした後乾燥したものを白芍薬または真芍と呼んで、市販されている。
よく育った芍薬の直根を見ると、直腹筋が立って二本棒をさした形態と似通っている。このように薬草の形態からその薬効を考察・連想するのを、象形薬理学と呼ぶ学者も居る。