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カラスビシャクは、わが国各地の田畑に多く野生する多年草で、六月ごろ、茎の頂に蛇が頭をもたげたような形で肉穂花序が開き、そのぶつえんほう仏焰苞葉の形状からからす烏びしゃく柄杓と呼ばれるほか、雀のひしゃく柄杓または柄杓草の名がある。 また、地下にある径約1cmの球茎の形や、それから出ている1〜2枚の葉の葉柄の下部に着くむかごの形状とから、ヘソクリ、ヘブス、ハンゲなどの別名がある。 ハンゲと呼ばれる由来は、夏のはんげしょう半夏生(げし夏至から11日目で陽暦7月2日ごろにあたる)のころに採集する薬草であるためで、球茎を薬用とし、生薬名も半夏と呼ばれる。田畑の雑草で、球茎とむかごとで猛烈に繁殖するが、これを畑仕事の合い間に農夫が掘り取り、家に持ち帰る。婦女はこれを里芋を洗うように桶に入れて皮を取り、日乾する。 干し上がると、真っ白な球茎半夏ができる。そして、仲買人が家々に回ってきて、この球茎半夏を買い取っていく。ちなみに、へそくり金の言葉の由来はヘソクリを売って婦女が得た臨時収入であることによるといわれている。 ヘブスは、トリカブトの根(附子)に似て貧弱な球根であるという意と考えられる。 江戸時代には、鹿児島、熊本、大分県産が良品とされ、西日本に広く産出し、江州半夏や三浦半夏の名もあったが、今日では薬用としての生産はなく、栽培生産が試みられている程度で、ほとんど韓国と中国とから輸入している。 中国では四川、湖北、安徽、江蘇、浙江、河南の諸省から産出し、四川産が質・量ともに主流を占めている。 |
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半夏は古く『神農本草経』の下品に収載されていて、漢方では欠くことのできない重要生薬で、鎮嘔・鎮吐の要薬である。嘔吐を鎮めるだけでなく、鎮咳、鎮静、去痰、利尿の作用もある。 胃内停水があって、その逆上のためにおこる悪心、嘔吐、咳嗽、心悸、目眩、頭痛、咽喉腫痛、妊娠悪阻(つわり)、不眠症、神経症などに幅広く賞用される。 ただし、そのまま服用するとえぐ味が強く、咽喉を刺激してかえって嘔吐を催すので、必ず生の生姜か乾姜と共用することを忘れてはならない。一日の用量は、5〜8gを煎用とする。 成分はでんぷん澱粉、精油、粘液質、脂肪油、しゅうさん蓚酸カルシウムの針晶、無機質、グルコーゼ・ラムノーゼなどの糖類のほか、微量のアルカロイド様物質、コリン、ベータシトステロール、ベータントステリールグルコサイド、トリテルペノイド、グルクロン酸、微量のエフェドリンなどが知られている。 特異のえぐ味の成分はホモゲンティシック酸といわれていたが、最近、3・4ジヒドロキシベンツアルデヒドの配糖体が検出され、そのアグリコンにも強烈な刺激味のあることが報告された。 半夏の鎮嘔成分は、グルクロン酸の誘導体と、一種の水溶性配糖体と考えられている。アルカロイド様物質は、中枢神経と運動神経末梢抑制作用、唾液の分泌促進作用が認められている。 |
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半夏は、民間薬として脚気や船酔い、胃腸病、神経痛、毛生薬、底豆などに利用されている。 中国では、外傷出血や子宮頚びらん糜爛に粉末として塗布し、蛇による咬傷には新鮮品をつ搗いてはりつけている。 漢方では薬性辛平の水剤として広く応用され、脾胃二経に働き、胃内に停滞した水毒を除くため、激しい嘔吐、特に妊娠悪阻(つわり)に特効があり、小半夏加ぶくりょう茯苓とう湯(半夏・茯苓・生姜配合)が賞用されている。 さらに激しい悪阻には、ふく伏りゅう竜かん肝とう湯が応用される。これは、前処方にかまどの土か、かわらけを加えたものである。悪阻だけでなく、車酔いや船酔いの予防と治療にもよい。 また、鎮咳・鎮静にはこうぼく厚朴を処方した半夏厚朴湯が神経症、気鬱症に賞用され、さい柴こ胡、おうごん黄芩を処方しただいさい大柴こ胡とう湯、しょうさい小柴こ胡とう湯などに頻用される。 激しい咳嗽には桂枝と麻黄人参を配した有名処方、しょうせい小青りゅう竜とう湯があり、嘔吐、下痢、腹中雷鳴などの胃腸障害には、黄連、黄芩、人参、甘草、乾姜を加味したはんげしゃ半夏瀉しん心とう湯、甘草瀉心湯、生姜瀉心湯などが今日でも繁用されている。 |